鹿児島市議会への陳情(令和8年6月9日提出)

【件名】他自治体の先進事例を踏まえた鹿児島市宿泊税における小規模事業者の負担軽減、および観光・医療・福祉連携による滞在インフラ整備に関する陳情

【陳情の趣旨】
鹿児島市が導入を目指している宿泊税について、本市にて主として離島住民向けの民泊を運営している立場より、本市の地理的・福祉的実態および他自治体の先進事例に鑑み、重大な懸念を表明するとともに、制度設計の抜本的な再考を要望いたします。

1.小規模事業者の存続危機および低価格宿泊者の負担増について
大規模ホテルと異なり、当方のような小規模事業者にとって、手作業による記帳や申告等の事務負担を強いられることは、経営の継続を脅かす死活問題です。免税点のない一律徴収は、事業者の経営を圧迫するだけでなく、学生やバックパッカーなど多様な宿泊者の利用機会を奪い、本市の観光多様性を損なう恐れがあります。

2.生活必需目的の宿泊者に対する課税の不公平性について
本市は鹿児島県における医療・教育・行政の中心地であり、深刻な医療・教育格差に直面している離島住民等にとって、出産や高度医療、教育等のために滞在せざるを得ない生命線です。しかし現状、これら生活目的の滞在者は、住民票が本市でないために本市のファミリーサポートや介護ヘルパー等の福祉サービスが利用できない不利益を被っています。このような状況下、選択の余地なく宿泊を必要とする生活者に一律に課税することは、二重の不利益であり、税の公平性を著しく欠くものです。インフラを消費する日帰り客(クルーズ船等)が免税される一方で、生存のために宿泊を必要とする人々へ課税することは承服しかねます。

3.他自治体における免税点および負担緩和の先例
島根県松江市や石川県金沢市、宮城県仙台市等では、「免税点」を設けることで、格安料金での宿泊者や小規模事業者を守る制度設計が標準となっています。また、沖縄県では、一律徴収を行いつつも福祉面で実質的に負担を相殺する仕組みが構築されています。

4.本市の特性を活かした「メディカル・リトリート」への発展の可能性
本市は、高度医療機関がコンパクトに集積する「医療都市」であると同時に、桜島をはじめとする豊かな自然や温泉、食文化に恵まれた「癒しの都市」でもあります。また、調査研究や学術集会で訪れる方の多い「学究都市」であり、天候による交通遮断が多い「災害の多い都市」という側面も持っています。本市は、「離島の医療過疎」と「都会のストレス」という、異なる二つの課題を同時に包み込み、解消できる素晴らしいポテンシャルを有していると言えます。
新設される宿泊税が観光目的税であることを踏まえ、本市が他都市に先駆けて「観光・医療・福祉が連携した滞在インフラ」を整備すれば、都会のストレスから離れて不妊治療や出産育児、各種療養に臨む人々を全国から呼び込む「メディカル・リトリート(医療・滞在型観光)」の先進地へと進化できます。同時に、離島住民が市内で安心して医療・福祉を受けられる基盤(医療過疎の補完)を共につくり上げることへと直結します。
これは災害に強いまちづくりにも寄与するものであり、すべての宿泊者のQOL(滞在の質)向上に寄与する温かい制度設計となるものです。

つきましては、以下の項目を強く要望いたします。

【要望項目】

1.宿泊税の使途として、すべての滞在者が万一の際にも安心して過ごせるよう、ファミリーサポートやヘルパー等の地域福祉サービスを住民票のない宿泊者でも柔軟に利用可能とする等の、観光・医療・福祉の連携ネットワーク構築事業に明確に税収を還元すること。

2.島根県松江市等の先例に倣い、学生・バックパッカーや生活目的(医療・通院・出産・教育等)の宿泊者、および民泊等の小規模宿泊施設を守るため、宿泊料金に応じた明確な「免税点」の設定や、一定規模以下の事業者に対する徴収義務の免除制度を確立すること。

目次